王子様の溺愛【完】※番外編更新中
昼休みになり、依人はすぐさま教室を出て行き、足早に空き教室へ向かう。
少しでも縁と過ごす時間が欲しい。
そんな思いが依人を突き動かしていた。
しかし、その歩みは突然止まった。
ズボンのポケットに入れてあるスマートフォンが震えたのだ。
長めの振動からメッセージの受信ではなく、着信だと判断する。
依人は何も考えずにスマートフォンを取り出し画面を見たが、そこに表示された縁の名に目を丸くさせた。
「もしもし」
「もしもし、桜宮先輩ですか!?」
着信は縁だが、耳に届いたのは縁とは違う声だった。
「あたし、縁の友達の北川鈴子です」
鈴子の声音は、明らかに焦りがあり、依人は只事ではないと感じた。
「佐藤さん、何かあったの?」
「縁、さっきの授業で倒れました」
鈴子の発言に依人の頭の中は真っ白になった。
「寝不足が原因みたいで、今は保健室で休んでーーーー」
かろうじて鈴子の話を聞き取ると、踵を返して保健室に向かって駆け出した。
保健室のドアの前に立つと、二回深呼吸をして逸る気持ちを落ち着かせる。
ドアの取っ手に手をかけて静かに開けて中へ入ると、出迎えたのは長身の少女だった。
緩く波打った栗色の髪に、縁とは違う大人びた綺麗な顔立ちをしていた。
「君がさっき電話した」
「あたしが北川です。さっきは驚かせてごめんなさい。今縁はこっちのベッドに寝ていますよ」
鈴子は三つ並んでいるベッドの内の、一つだけカーテンで仕切られている方へ歩いていった。
鈴子がそっとカーテンを開けると、そこには静かな寝息を立てて眠っている縁がいた。
深刻な症状の可能性を考えていた依人は、その縁の穏やかな寝顔を見てほっと安堵の息をついた。
「んっ」
しばらく声を殺して、様子を見守っていると、縁はようやく目を覚ました。
「あれ……あたし……」
寝ぼけ眼に舌っ足らずの物言いは、普段より幼く見える。
「授業中倒れたのよ。心配したんだから」
「う……ごめんね?」
「また、本読み耽って夜更かししたんでしょう」
「うん……辞め時が分からなくて、つい……ごめんね」
呆れ気味に窘める鈴子と、しょんぼりとペコペコと謝る縁。
二人のやり取りを見ていると、姉妹のように映る。勿論、姉は鈴子で妹は縁である。
「没頭出来る趣味があるのはいいことだけど、ほどほどにしないと身体壊すわよ。桜宮先輩も心配したんだから」
「分かったよ……え、鈴子、今何か言った?」
寝ぼけ眼を大きく見開かせる縁を見た鈴子は、こっちを見ろとように人に視線を送った。
少しでも縁と過ごす時間が欲しい。
そんな思いが依人を突き動かしていた。
しかし、その歩みは突然止まった。
ズボンのポケットに入れてあるスマートフォンが震えたのだ。
長めの振動からメッセージの受信ではなく、着信だと判断する。
依人は何も考えずにスマートフォンを取り出し画面を見たが、そこに表示された縁の名に目を丸くさせた。
「もしもし」
「もしもし、桜宮先輩ですか!?」
着信は縁だが、耳に届いたのは縁とは違う声だった。
「あたし、縁の友達の北川鈴子です」
鈴子の声音は、明らかに焦りがあり、依人は只事ではないと感じた。
「佐藤さん、何かあったの?」
「縁、さっきの授業で倒れました」
鈴子の発言に依人の頭の中は真っ白になった。
「寝不足が原因みたいで、今は保健室で休んでーーーー」
かろうじて鈴子の話を聞き取ると、踵を返して保健室に向かって駆け出した。
保健室のドアの前に立つと、二回深呼吸をして逸る気持ちを落ち着かせる。
ドアの取っ手に手をかけて静かに開けて中へ入ると、出迎えたのは長身の少女だった。
緩く波打った栗色の髪に、縁とは違う大人びた綺麗な顔立ちをしていた。
「君がさっき電話した」
「あたしが北川です。さっきは驚かせてごめんなさい。今縁はこっちのベッドに寝ていますよ」
鈴子は三つ並んでいるベッドの内の、一つだけカーテンで仕切られている方へ歩いていった。
鈴子がそっとカーテンを開けると、そこには静かな寝息を立てて眠っている縁がいた。
深刻な症状の可能性を考えていた依人は、その縁の穏やかな寝顔を見てほっと安堵の息をついた。
「んっ」
しばらく声を殺して、様子を見守っていると、縁はようやく目を覚ました。
「あれ……あたし……」
寝ぼけ眼に舌っ足らずの物言いは、普段より幼く見える。
「授業中倒れたのよ。心配したんだから」
「う……ごめんね?」
「また、本読み耽って夜更かししたんでしょう」
「うん……辞め時が分からなくて、つい……ごめんね」
呆れ気味に窘める鈴子と、しょんぼりとペコペコと謝る縁。
二人のやり取りを見ていると、姉妹のように映る。勿論、姉は鈴子で妹は縁である。
「没頭出来る趣味があるのはいいことだけど、ほどほどにしないと身体壊すわよ。桜宮先輩も心配したんだから」
「分かったよ……え、鈴子、今何か言った?」
寝ぼけ眼を大きく見開かせる縁を見た鈴子は、こっちを見ろとように人に視線を送った。