【11/7改訂版】お願いダーリン! ~大好きな上司に片思い~
千香は回想していた。

千香は走っていく二人を見送っていると、ポンと頭に触れる手の重みで振り返った。
『千香ちゃん、やっぱり晃呼びにいったね』
そこには町田が少し雨に濡れた前髪をゆっくりとかき上げながら、結花を見下ろしていた。

『見つかっちゃいました?そりゃあんな自棄になった結花を町田主任には預けられないですよ』
挑戦的な目で町田を見据えた千香に、ふわっと町田は笑顔を向けると、
『とりあえず雨だし、店戻らない?』
『……いいですよ』
その笑顔に千香はなぜか断ることもせず、町田の後を追った。

町田に促されて千香はカウンターに座ると、少し濡れた服をハンカチで拭くと一息ついた。
『ワインでいい?好きだったよね?』
ワインリストに目を落としながら町田は千香に聞いた。
『はい』
千香の返事を聞くと店員に軽いつまみとワインを注文し、町田は煙草に火をつけた。
『町田主任……さっきのわざとですよね?』
『何が?』
町田は煙草の煙をゆっくりと吐き出すと千香をチラッと見た。
『さっきのキス。樋口主任を見てわざとしましたよね?』
町田は答えることなく、少し微笑むと運ばれてきたワインに口をつけた。
千香は初めて見るその顔に少しドキッとした。

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