【11/7改訂版】お願いダーリン！ ～大好きな上司に片思い～

ふと、整えるような息遣いが聞こえると同時に、千香の頭上から言葉が降ってきた。
「ねえ、千香ちゃんが泣いているのは俺のせいだってうぬぼれていい？」
その優しい声に千香はそろそろと顔を上げた。
少し息を切らして、慌てた様子の町田がそこにはいた。

かけられた言葉の意味が解らず、千香は呆然と町田を見つめた。
「とりあえず出ようか？」
「え……さっきの女の人……」
千香はなんとか言葉を呟いたが、町田は千香の手を取り店を出ると、すぐにタクシーを止め千香を乗せた。

「S町まで」
静かに行き先を告げた町田の行動が全く理解できず、千香は黙って座っていた。

「俺の家に行くけど、警戒しないで。そんな顔の千香ちゃんをこのまま返せないし、店だと人の目も気になるしね」
その言葉に、千香は涙でぐちゃぐちゃの顔を慌てて手で覆った。

「俺は大丈夫だよ。でも、千香ちゃんが嫌でしょ？その顔でご飯とか行くの」
「はい……」

１５分ぐらいでマンションに着くと、町田は千香の手をひいて部屋へと連れてきた。
「入って」
恐る恐る千香は足を踏み入れると、1LDKの奇麗な部屋だった。
男の人の一人暮らしと言えば、雑然としたイメージをしていたが、町田の部屋は物もあまりなく、すっきりとした部屋だった。