【11/7改訂版】お願いダーリン! ~大好きな上司に片思い~
「偶然でしたね」
大脇の言葉に晃はハッと我に返り大脇を見た。
「ああ」
晃は目の前のコーヒーに手を伸ばすと一口飲んで、大脇からの視線を避ける。
「なんか、お似合いの二人でしたね。樋口主任、さっきの話ですけど、本当におためしでいいので、付き合ってみてくれませんか?ダメなら諦めるので」
大脇の積極的なアプローチに晃は小さくため息を付いた。
「ダメなら諦めるって…。そんな簡単に付き合ってもよくないだろ?きちんと知ってから付き合わないと」
晃の諭す様な物言いにも、大脇は諦めることなく言葉を続ける。
「そんな真面目に考えないでください。もう決めました!樋口主任がなんと言おうが。私は諦めませんから」
綺麗に塗られた赤い唇が、綺麗な弧を描くのをただ晃は見ていた。
そんな大脇よりも、さっき町田に手を引かれる結花の後姿が頭に浮かぶ。
「今日は、これで諦めますけど、これからよろしくお願いします」
大脇の勢いに、何もいえなかった晃は、大きくため息をつく。
(何をやってるんだよ……俺)
自己嫌悪にも似た感情が、晃を支配した。