神木部長、婚姻届を受理してください!
にやにや、と口角を上げて笑っている彼の口からはしばらく次の言葉は出て来ない。
「勿体ぶらないで、早く言ってください!」
「あはは、ごめん。分かった分かった」
焦らされ続け、我慢ができなくなった私が次の言葉を急かす。すると、西内さんは声を出して笑いながら何度も首を縦に振った。そして。
「中幡さんと部長、付き合ってないらしいよ」
やったね、と付け足して右手でピースサインを作り出す。
「あ……えっと、そうだったんですね」
何を言い出すかとドキドキしていた私の頭に入り込んできたのは、すでに私も知っている情報だった。
そうだ。聡介さんと付き合う前、私が西内さんに、中幡さんと聡介さんが付き合ってると思う、だなんて勝手な憶測を話してしまったんだったっけ。
「ただ、二人が学生時代に付き合ってたって噂もあるらしいから元サヤもあり得るかもしれない。あ、ちなみに、これがバッドニュースね」
引き続き、心の準備をする間も無くバッドニュースまで耳に入れたけれど、それも香織さんから聞いて既に知り得ている情報だった。
嫌な緊張感を感じていた私は、やっとその緊張感から解放され、小さく安堵の息を漏らす。