神木部長、婚姻届を受理してください!
結局、一週間が経っても私のマイナス思考は止まらず、ここ数日は私から聡介さんのことを避けてしまっていた。
一昨日、聡介さんが仕事終わりにご飯でもどうかと誘ってくれたけれど、それも適当な用事をつけて断り、仕事でも極力二人きりにならないようにしている。
これじゃあ、さすがの聡介さんもそろそろ愛想を尽かしてしまうかもしれないな、なんて考えながら溜息をこぼしたその時。
「あ、立川」
「……部長」
背後からかかった声に振り返る。すると、そこにいたのは資料室から出てきたばかりの聡介さんだった。
「こらこら、こんなドアの真ん前に突っ立ってると危ないだろ」
「あっ、すみません」
資料室の真ん前に立ち止まってしまっていた私は、聡介さんと目を合わせずに謝るとすぐに身体を半回転させた。
「待って、立川」
聡介さんに背を向けて一歩を踏み出そうとすると、去ろうとしていたはずの私の右腕は、聡介さんの手によって掴まれ、逃げようがない状態になっている。
「立川と話がしたい。今日、仕事終わりに外で待ってるから」
真っ直ぐ私を捉える瞳。私が、その瞳から逃げるように視線を落とすと、右腕から聡介さんの手が離れた。
もう一度、ゆっくり視線を上げると、聡介さんは既に私に背を向けて歩き出していた。