神木部長、婚姻届を受理してください!

「流石にあの神木部長も、ドキッとさせられるかもしれないねえ」

 田口さんが、にこにこと笑う。私は、その田口さんの言葉でまた肩を落とすと、小さく溜息を吐いた。

「ドキッとなんて、ちっともしてくれなかったです」

 ぼそり、と呟くと私はまた自分の席に向かって歩き出した。

 席に着き、また小さく溜息を吐くと、私はいつものようにパソコンと向かい合い仕事を始めた。



「沙耶ちゃん、一緒にお昼行きましょ」

 淡々と仕事を続けていると、あっという間にやって来たお昼休憩。私は、香織さんに誘われ、会社の向かいにあるカフェに入った。

「どうだったの? 髪型効果は」

「気づいてはくれてました。だけど、他は何も言われませんでした」

 視線を落としながら答え、私は目の前にあるサンドウィッチを口に運んだ。

「まあ、そうでしょうね」

 サンドウィッチを頬張りながら香織さんを見る。すると、香織さんはどうしてか笑っていた。

「何笑ってるんですか!香織さん、他人事だと思って」

 私のメンタルはボロボロです、と眉尻を下げてみる。香織さんはそんな私にも「沙耶ちゃんのメンタルなら、まだ大丈夫よ」なんて言って笑っているのだから、本当に他人事と思っているに違いない。

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