神木部長、婚姻届を受理してください!
「確かにそうですよね。怖いですけど、部長にちゃんと分かってもらえるように気持ちを伝えて、その上で振られた方が次に進めそうな気がします」
ずっと、一晩考えたって部長を好きでいることをやめる自分が想像できなかった。
部長以外の人を好きになるなんてあり得ないと思っているし、部長以外の人と一緒になりたいとも思わない。だけど、それは部長が厳しいだけじゃなくて、時々こんな私にも優しさをくれるから。だから、私はずっと部長を諦められなかった。
でもそれは、私がただの部下だから。分かっているけれど、本人から直接言われているわけじゃないから、バカな私は少しの希望を持ってしまう。
神木部長本人の口から、〝好きじゃない〟〝諦めてほしい〟と言われれば、流石の私も決心ができて次に進むことができるかもしれない。それなら、それがいい。怖いけど、そうするしかない。
「香織さん、ありがとうございます。香織さんのおかげでちょっとだけ次に進むイメージができました」
「そう? それなら良かった」
次に進みたいわけじゃない。部長を好きじゃない自分になりたいわけじゃない。
だけど、いつまでもこうしちゃいられないとも思っていた私は、香織さんのアドバイスを実行することに決めた。