神木部長、婚姻届を受理してください!
素早く返事を打ち、返信ボタンを押す。もちろん、返事は〝参加します〟だ。
私は、返事を送ると、下がらない口角をそのままに仕事を再開した。
好き寄りで行う飲み会は定期的にあるけれど、部長や課長が参加する機械技術一課全体の飲み会というのは中々行われない。企画されても、部長や課長が忙しくなかなか都合がつかないのだ。その為、今回の飲み会は、仕事以外で神木部長にアタックできる大チャンス。
神木部長を堪らなく好きな私としては、このチャンス、何が何でも掴んでやりたい。
───そう、思っていたのだけれど。
「皆さん本日もお疲れ様でした。今回は部長と課長も参加してくださっているので、企画者としても、大いに楽しんで頂けたらと思います。それでは、僭越ながら乾杯の音頭を……」
職場の最寄駅にある小さな焼き鳥屋。この店の大将が企画者である西内さんの知り合いらしく、いつも飲み会はここを貸切って開催される。
小さな焼き鳥屋の奥にある座敷。そこに私や部長を含む20名は腰をかけているのだが、隅っこにいる私と、ちょうど対になる場所。向かいの席の一番隅に座っている部長。何とも言えない遠い距離に、私のテンションは乾杯の音頭をとる前から急降下中。