神木部長、婚姻届を受理してください!


「沙耶ちゃん、今日の駐車場点検しておいてもらってもいい?」

「あ、はい。今から行って来ますね」

「ありがと」

 翌日、私はいつも通り何も変わらない環境の中、仕事に励んでいた。

 日課のようになっていた神木部長への挨拶やアピールが無くなったこと以外は何も変わらない。仕事内容も、周りの人も、本当の私の気持ちも。

 だけど、あの日から変わったこと、気になることがひとつだけあった。


 チェックリストを片手に事務所を出ると、私は一人寂しく出入口に向かって歩き出した。

 私は、その〝気になること〟を確かめるために今日も自動販売機の設置された休憩コーナーを通ってみた。すると、今日もそこには神木部長と一人の女性の姿があった。


「……やっぱり」

 神木部長と仲睦まじく話をしていたのは、他の男性社員さんと同じように機械設計をしている中幡紗和さん。部長と同い年で、前々から二人で話しているところを見かけることはあったけど、何故か、ここ数日は頻繁に見かけるようになった。

 ある時は廊下で。ある時は、こうして休憩コーナーで。いつも楽しそうに話をしている二人の関係が、少し……いや、かなり気になってしまう。

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