神木部長、婚姻届を受理してください!

 仕方なく発した私の言葉に、西内さんは目を丸くした。

「え、諦めちゃうの? って、それより、本当に本気だったんだ? 神木部長のこと」

「本気だったんだ、って……酷い!西内さんまで冗談だと思ってたんですか!」

 私の言葉に、また更に目を丸くした西内さん。どうやら西内さんも、私が部長に持っていた好意を冗談だと思っていたらしい。

「だって、部長、かなり年上でしょ? 間違いなく嬉しいとは思うけど、そんなに年下の女の子がおじさんを好きだなんて、普通に嘘みたいな話だと思っちゃうよね」

「神木部長はおじさんじゃないですー」

 ぷくっと頬に空気を溜める。すると、西内さんは笑って「ごめんごめん」と言うと、再び口を開いた。

「へえ、そうなんだ。え、でも付き合ってはなくて、しかも、諦めちゃうんだっけ? どうして? 絶対、脈アリでしょ?」

 仕方なく質問に答えて、引き下がってくれるどころか、逆にぐいぐいと迫って来る西内さん。私は、偶然香織さんが通りかかってくれることを祈りながら廊下をきょろきょろと見渡した。すると。

< 50 / 113 >

この作品をシェア

pagetop