神木部長、婚姻届を受理してください!
───翌日。
私は、いつものように淡々と仕事を進めていた。もちろん、少し前まで日課だった、部長への挨拶は今日もしていない。
会社に来て、ただ仕事をする。時々、神木部長の姿を見れば胸がぎゅっと締め付けられるけれど、そんな痛みも耐えることしか出来ない。
今や楽しさなんて微塵もなく、苦しくて長い勤務時間。何とかそれを半日乗り越えられた私は、香織さんと一緒にカフェでランチをすることに。
「最近、沙耶ちゃんの元気がないって皆心配してる。無理もないけど、立ち直るのが難しいようなら、合コンでもセッティングしようか?」
眉尻を下げながら、目の前にあるスパゲティを口に運んだ香織さん。
「この間、西内さんも田口さんも心配して私にいろいろ聞いて来たわ。どの質問にも答えなかったけど」
「そうなんですね……」
「やっぱり、まだ、好きなのよね?」
香織さんの質問に、私は少し間を置いた後、一度だけこくりと頷いた。
神木部長を諦めるために想いを伝えたはずなのに。部長は、今までよりもっと遠い存在になってしまったはずなのに。私はまだ、ほんの少しだって部長を諦められてなんかいない。
やっぱり、まだ好きで。出来ることなら諦めたくないと思ってしまう。