神木部長、婚姻届を受理してください!
「最近、部長と中幡さんが二人で話してるところをよく見るんです。部長は、中幡さんが好きなのかな、なんて思っちゃって余計に気分が下がっちゃうというか……」
視線をテーブルに落とし、オレンジジュースを一口飲む。すると、香織さんはハッとしたような表情で口を開いた。
「あ、私も何度か見かけたわ。中幡さんと部長が話してるところ」
「もしかして、付き合ってるんですかね……?」
「それは知らないけど、その可能性も否定できないくらい仲良さそうではあったわね」
自分で聞いておきながら、私は香織さんの返事に肩を落とした。
確かに、私が見かけた時も二人仲良さそうに話していたし、親密な雰囲気が出ていた。二人が付き合っていると言われても納得できるような、そんな雰囲気だった。
「……はあ。私、どうしたらいいですかね。部長のこと、全然諦められそうにないです」
「いいんじゃない? 好きでいることくらいは誰の許可もいらないわよ。好きなんだから仕方がない。忘れようとして忘れられるならそれは恋じゃない。恋は理屈じゃないんだから」
好きなだけ、好きでいなさい。
そう言って私に笑いかけてくれた香織さん。私は、香織さんの言葉に少し元気付けられ、一度だけ深く頷いた。