神木部長、婚姻届を受理してください!
ああ、言ってしまった。
私は、抑えきれず感情のままに発してしまった自分の言葉をひどく後悔した。だけど、時すでに遅し。
「え? ちょっと待って。立川、俺、どこからつっこんだらいい?」
「え?」
自分の発した発言を後悔し、自己嫌悪に浸っていると、頭上から聞こえてきたのは神木部長の少し間の抜けた声。
部長につられて私も間抜けな声を出すと、神木部長は首を傾げて口を開いた。
「立川、本当は西内と付き合ってるんじゃないの? あと、中幡って何? あいつ、どっから出てきたの」
「えっ? 西内さんとは付き合ってないって昨日言いましたし、神木部長、中幡さんと付き合ってるんじゃ……」
「え? でも、さっきも二人で楽しそうに話してたし、俺に付き合ってないって言ったのは周りに秘密にしてるからだと思ってたんだけど……ちょっと待って。中幡と付き合ってるってどこの情報?」
「付き合ってないです!あれは、西内さんが勝手に嘘ついただけです! 中幡さんのことは情報というより……私の想像?です」
「え? ごめん、歳だから全然頭が整理できない。とりあえず、俺は中幡とは付き合ってない。立川も、西内と付き合ってない、ってことでいいか?」
部長の言葉に、私は大きく頷いた。すると、部長は溜息のような声を漏らし、髪をかき乱した。