神木部長、婚姻届を受理してください!

 嬉しくて、幸せで、なかなか下がってくれない口角。表情筋が今まで生きてきた中で一番に緩んでいるのではないかと思うほどの笑みを浮かべてお昼休憩を終えると、また私はご機嫌で仕事に取り組み始めた。

「立川さん、申し訳ないんだけど、15時までにこの書類50部コピーしておいてくれない?」

「あ、はい!了解しました!」

「立川さん、こっちもお願い!」

「はい!了解です!」

 厚みのあるの資料束を抱え、プリンターの前に立つと、笑顔で資料をセットしてスタートボタンに触れる。

「ふふ」

 いつもなら、退屈であまり好きではない資料のコピー作業。だけど、今日は違った。

 下がらない口角と、止まることのない思考回路。これから部長としたいことや話したいことを考えると楽しくて仕方がなかった。

「おやおや、立川ちゃん」

 今にも鼻歌を歌い出してしまいそうな程の上機嫌でコピーされた束を纏めていると、オフィスに入ってきた田口さんが私に声をかけた。

「あ、田口さん」

「どうしたんだい? 今日はずっとご機嫌じゃないか」

 何かあったのかな? と言って笑う田口さんに、私はまた昨日の出来事を思い浮かべ口角を上げてしまった。

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