神木部長、婚姻届を受理してください!
「いや、不満があるとかそういうわけでもないよ。だけど、交際を公表して、立川だってそうだし、周りのみんなが仕事をしづらい状況になるのは上司としても避けたい」
そう発した後、私の様子を伺うようにして見ている神木部長。私は、彼にも分かるように眉間にしわを寄せ、頬に空気を溜め込んだ。
確かに、彼の言い分は分かる。だけど、どうしても素直に納得ができなかった。
私は、こんなにも嬉しくて、みんなにこの気持ちを知って欲しいくらい幸せなのに。彼はそうではないのだろうか。そう、卑屈に考えてしまう。
「……分かりました」
もちろん納得はいかないけれど、私は首を縦に振るしかなかった。
我儘を言って部長を困らせたいわけでも、別れたいわけでもない。だから、少しの不満を抱えたまま、私はおとなしく部長室を後にした。