神木部長、婚姻届を受理してください!



「立川」

「はい!」

「今日、これから時間あるか?」

「え⁉︎ は、はい!時間、あります!いっぱいあります!」

 定時を過ぎた頃、ちょうどオフィスに戻ろうとした私の背後から声が掛かった。振り返るとそこには部長がいて、恐らくこれから私を食事に誘おうとしている。

「はは、いっぱいあるのか。そりゃあ良かった。まだちゃんとデートもしてないし、ひとまずご飯、食べに行こうか」

 ビンゴ!!

 心の中で大きくガッツポーズを決めた私は、ぶんぶんと勢いよく首を縦に振る。そんな私を見てくすくすと笑いながら「先に外で待ってる」と残すと、彼は背中を向けて去って行った。


 これから、神木部長と二人で初のご飯だ!

 またやって来た夢のような現実に口角が上がってしまう。

 神木部長と念願の二人ご飯。部長は、〝ひとまずご飯、食べに行こうか〟と言ったけれど、私にとってはご飯も立派なデートだ。神木部長と一緒なら、何をしていたってデートなのだ。

 私は、オフィスに入ると急いで帰り支度を済ませ、足早にお手洗いに向かう。そして軽くメイクを直し、束ねていた髪を下ろすと会社を後にした。

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