神木部長、婚姻届を受理してください!

 手を繋いで、仕事の話や他愛もない話をしながら歩き続けること五分。神木部長は、アンティークな外装のダイニングキッチンの前で立ち止まった。

「ここ、きっと立川が好きな感じのお店だと思うよ」

 そう言って笑うと、先に扉の手すりに手をかけて引いた。彼は、私に先に店内へ入るよう視線で促すと、私に続いて店内に入って来た。

「いらっしゃいませ。2名様でよろしいでしょうか?」

「はい」

「かしこまりました。ご案内致します。こちらへどうぞ」

 店内に入ると、シャツに黒いパンツ。それからエプロンをした可愛らしい店員さんが私たちを出迎え、奥の席へと案内された。

 店内は、落ち着いた暗めの照明で、バーのようなカウンターもあり女子会にも使えそうな雰囲気だ。

 私は、外装と内装を見ただけでもう既に気持ちが高ぶっていた。

「ちょっとお洒落な居酒屋メニューもあるし、洋食も置いてるらしくて。これなら食べるものも困らないだろ?」

 メニューに目を通すと、確かに、部長の言う通りメニューは普通の居酒屋にもあるようなものと、イタリアンなものも、デザートまで充実している。

 あまり高いお店だと食べるものを決めるのも一苦労な私にとっては、とても好感の持てるお店だ。

 ひょっとして、神木部長は私のためにリサーチしてくれていたのだろうか。

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