神木部長、婚姻届を受理してください!
「はい。ゆっくり休んでください」
「立川ちゃんもね」
「はい!ありがとうございます。今日はちょっと遅くなりそうですけど、休める時に休むようにします」
ふと、左腕につけている腕時計を見た。時刻は16時過ぎ。ざっくり今日中に終わらせたい業務のスケジュールを立てると、どうも今日は21時を過ぎないと帰らなさそうで溜息が出てしまった。
「溜息ついたら幸せに逃げちゃうよ?」
「すみません。つい」
「はは。いいよ。だけど、また部長のことで悩んでるのかなと思ったから少し心配でさ」
眉尻を下げて、本当に心配そうな表情を浮かべる西内さん。
「あ、西内さん、あの!」
「ん? なに?」
聡介さんと付き合うことになったという事をまだ西内さんに報告をしていなかったな、と今更思い出してハッとするけれど、その後すぐにこの交際は秘密であることも思い出してしまった。
これだけ心配してくれて、応援してくれている西内さんにも言ってはいけないのか。
やっぱり、納得できない。
「えっと、何でもないです。神木部長のことでは今悩んでないので安心してください!ありがとうございます」
納得はしていないけれど、聡介さんとの約束を破るわけにもいかず。私は、西内さんにそう告げると罪悪感にも似た気持ちを抱えながら頭を下げた。