神木部長、婚姻届を受理してください!

「泊まります!泊まらせてください!」

 まだ聡介さんと一緒にいられる。しかも、二人きり。こんなチャンス、次にいつやって来るかも分からないのだ。

 このチャンスを逃す理由なんて見当たらず、私はつい前のめりになりながら返事をした。

「それなら、家帰るか」

「はい!」

 先に歩き出した彼の斜め後ろを歩き出す。右手がそっとこちらに差し出された。そのことに気づいた私は、その手に私の左手を重ね、ぎゅっと握りしめた。

「ふふ」

 嬉しくて、幸せで堪らず笑みが溢れる。

「なに? 何か面白いことでもあった?」

「面白いことではないんですけど……まだ聡介さんと一緒にいられるのが嬉しくて」

 溢れんばかりの愛しさから、ぎゅっと強めた指先の力。まるで、私の気持ちに返事をするみたいに、聡介さんの指先も優しく力を強めた。

「ほんと、沙耶には敵わないな」

「え?」

「いや、なんでもない。あー、お腹すいた。家帰ったらご飯でも食べようか」

「はい!」

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