神木部長、婚姻届を受理してください!
神木部長、世界で一番に愛しています


 しかし、そんな幸せも束の間。

「本当に、ごめん」

 翌日の定時後に聡介さんに呼び出された私は、部長室で「今週の日曜のデートに行けなくなった」と告げられた。

 大きな案件が入ったことで滞っている業務が多いという部長は、今週土日両方休日出勤になるそうで。部長以外にも、機械設計をしている他の社員さんも休日出勤をする人はいるし、こればかりは仕方がない。

「大丈夫です!また今度、デートしてくださいね」

 本当は、もう既に日曜のデート服を新しく買いに行ったくらいには楽しみにしていた。それだけにデートの中止はショックだったけれど、ここで我儘を言っても部長は困るだけ。

 悲しい気持ちをぐっとこらえ、口角を上げてみせる。すると、部長は眉を下げたまま笑った。

「うん。もちろん」

「また何かお手伝いできることがあったら言ってくださいね! では、お先に失礼します」

「ああ、ありがとう。気をつけてな」

「はい!」

 右手を上げて笑い、そのまま部長室を後にする。すると、大量の書類を抱えた香織さんと鉢合わせた。

「香織さん、手伝います!」

 両腕に抱えられた書類で前が見えているのかも定かではない彼女から、私は半分くらいの資料を受け取った。すると、彼女はふう、とひと息ついてから笑った。

「ありがとう。すごく助かる」

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