神木部長、婚姻届を受理してください!
「本当にごめん、沙耶ちゃん」
「いえ!大丈夫です!きっと部長も、また私に直接話してくれると思いますし……だから、気にしないでください」
笑顔で香織さんにそう返し、私達二人はまた書類を抱えたままで歩き出した。
必死で笑って大丈夫だと言ってみせたけれど、本当は内心不安だらけだった。
やっぱり、未だに中幡さんと聡介さんが仲良さそうに二人で話しているところは見かけるし、付き合っていたことだって過去の事なんだから、わざわざ説明する必要はないとはいえ、どうして中幡さんとの関係を聞いたあの時に言ってくれなかったのだろう、とか。どうもネガティブな方向にばかり考え込んでしまう。
「あ、ここに置いておいて」
「はい!」
「ありがと。本当に助かった」
「いえいえ!それじゃあ、私、お先に失礼します」
「うん、お疲れ様」
デスクの上に書類をそっと置き、軽く頭を下げるとオフィスを後にした。
中幡さんと聡介さんの関係を聞いてから、胸がモヤモヤして仕方がない。考えたって仕方のない事だし、部長の事は信用している。だけど、不安で、どうしても気になってしまう。