神木部長、婚姻届を受理してください!
気にしちゃいけない。気にしたって、しょうがない。
そう自分に言い聞かせてはみるけれど、そう思い込もうとすればするほど気になって、中幡さんと聡介さんが一緒にいるところを見ると勝手に不機嫌になってしまう。
先週の日曜にするはずだった初デートだけではなく、聡介さんが忙しいだろうと気遣ってしまってあまり話しかけられないこの状況にも私のテンションは下がるばかり。
ああ、早く二人でゆっくり話がしたい。
「立川」
「は、はい!」
聡介さんと話がしたいと願って間も無く背後からかけられた声。振り向くと、そこには聡介さんがいて、右手で私を手招きした。
「ちょっと来て」
「はい」
先を歩き出す聡介さんの後ろをついて歩き続け、非常階段へ出る。
「何かあった?」
非常階段に出るなり、心配そうな表情を浮かべて私にそう伺う彼。続けて「最近、あんまり話せてないから何か溜め込んでないかと思って」と付け足すと私の顔を覗き込んできた。
「大丈夫ですよ」
笑って答えると、少しだけ腑に落ちない様子で「本当? それならいいんだけど」と返す彼。
心配してくれるのは嬉しいはずなのに、やっぱり、中幡さんのことが気になって仕方がない。だけど、聡介さんの口から話してくれる気配なんて全く無くて、それが無性に虚しくなる。