神木部長、婚姻届を受理してください!

「仕事戻るか」

 と言った聡介さんの一言で私たちは、非常階段を出るとお互いの仕事を再開した。


「立川ちゃん」

 一時間後に行われる会議資料を会議室のテーブルに並べ、会議の準備を進めていた私に突然声が掛かった。

 声のした方に顔を向けると、会議室の入り口にひょこっと顔を出している西内さんがいた。

「やっほ。会議準備ありがとね」

「あ、いえ!」

 とんでもないです、と返すと何やらまだ言いたげな様子の西内さん。首を傾げて次の言葉を待っていると、ゆっくり西内さんが口を開いた。

「会議終わったあとさ、ちょっとだけ時間もらっても良い?」

「あ、はい。大丈夫です」

「ごめんね、ありがと。会議、定時には終わると思うから。終わらなかったら全然帰っちゃっててくれて良いから」

「分かりました」

「それじゃあ、一旦オフィス戻るね。また後程」

 右手を上げて笑った西内さんに、私も何となく右手を上げてみる。その私の右手にもう一度くすりと笑った西内さんは会議室から去っていった。


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