神木部長、婚姻届を受理してください!
「立川ちゃん」
定時を過ぎた後、タイムカードを切り自動販売機の並ぶ休憩スペースのイスに腰掛けてぼうっとしている私の背後から声がかかる。その声の主は言わずとも西内さんで、私はイスから立ち上がると彼に小さく頭を下げた。
「会議、お疲れ様でした」
「ありがと。結構待ったでしょ? ごめんね」
「いえいえ!帰っても特にすることも無かったですし、全然大丈夫です」
ここ数日は、仕事で忙しい聡介さんからメッセージの返事が返ってくるのも夜22時を過ぎてから。
私は、いつも通り仕事をして、時間が来れば家に帰ってご飯を食べて聡介さんからのメッセージを待ちながら寝落ちしてしまう。そんな日々が一週間以上続いているのだ。
暇人といえば暇人の私からしたら、数十分待つくらいはどうってことない。
「とりあえず、座ろうか」
「はい」
私が先に腰掛けると、西内さんは私の向かい側の椅子を引いて腰を下ろした。
「あの、お話って……」
恐る恐るそう聞くと、西内さんが右手でピースを作り、私に見せた。
「立川ちゃんに二つ、報告したいことがあるんだけどさ。一つは良い報告ね。で、もう一つはちょっとバッドニュースになるかな。どっちから聞きたい?」