きみの頭上には雨雲がついてる。

今日もそう言うだろうと思ってた。だからお気に入りのウサギのタオルは持ってこないって決めてた。

だけどちょっと大きめのタオルは手を拭くだけじゃ使い勝手が悪いし雨の日に濡れたカバンを拭くぐらいが丁度いい。

だからしっかりとウサギのタオルは持ってきたけど、決して鈴原に貸すためなんかじゃない。


「貸してくんないの……?」

ポタポタと水滴が落ちる髪の毛。

下がった前髪から見える鈴原の瞳は黒目が大きくて、じっと見つめられると顔を反らしたくなる。


「……分かったよ、はい」

そっぽを向きながらタオルを差し出すと鈴原は「サンキュ」と言って私の指をさらうようにしてタオルを受け取った。

濡れた髪の毛をガシガシと拭いて、可愛いウサギの模様が台無しだ。


「なんで雨に濡れてくるの?」

また私の視線は窓の外。

「じゃあ、なんで雨なのにグラウンドばっかり見てんの」

「………」

鈴原とは特別仲がいいわけでもない。1年の時は別のクラスだったし2年になって普通に明るくて友達が多くてごく普通の健全な男子だなって印象だけ。

でも鈴原は知ってるんだ。

私が最近朝早く学校に来るようになった理由も、雨なのにグラウンドばかりを見てる理由を。


「振られたくせに未練たらしいでしょ?」

あえて自分から明るく言った。
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