きみの頭上には雨雲がついてる。
テニス部で場所は全然違うのに、わざと遠くの水呑場を利用してグラウンドを見に行ったこと。
先輩がゴールを決めた時『やった!』とガッツポーズしたこと。
いつでも可愛く渡せるように毎日違う柄のタオルをカバンに入れていたこと。
誰にも気づかれてないはずだったのに。
誰にも言ってなかったはずなのに。
きっと鈴原は全部知ってるんだ。
「そのウサギのタオルだってアンタに貸したかったわけじゃない……っ」
断ち切らなきゃいけないはずの想いが溢れ出た。
私の心みたいにずっとずっと雨が続いてる。私はヒクヒクと肩を震わせて鈴原に背中を向けた。
こんなのはただの八つ当たりだ。
だけど、だって。遅刻ばかりする鈴原が私と同じく朝早く学校に来て、雨だって知ってるくせに何故か濡れてくる。
なんなの。本当に。
背後でゆっくりと足音が聞こえてきた。
私はあえて窓を見ない。
鈴原の顔が、見えてしまう。
「明日の天気予報知ってる?」
鈴原の足は私の後ろで止まった。