きみの頭上には雨雲がついてる。
「知らないっ」
「晴れるらしいよ。梅雨なのに」
「だからなに」
「どうすればいいと思う?」
あまりにそれが弱々しい声だったから思わず顔を上げると窓越しに鈴原の真っ赤な顔が映ってた。
「晴れたらさ、こうして近づくチャンスがなくなるじゃん」
わざとだって知ってた。
タオルを渡す時、いつも私の指に触れることも。
教室に入る直前にちょっと髪型を気にしてることも。
なんで、私の片思いを知ってたのかってことも、
本当はちょっと、気づいてた。
「俺、望月のこと好きなんだ」
人生で初めて告白された。
それは自分が告白した時よりもずっとずっと、
心臓が速く動いてるように感じた。
まだきっと私の先輩への気持ちが消えたわけじゃない。
それなのにさっきまでジメジメとキノコが生えそうだったのに何故か小さな虹でもかかったような、そんな気分。
鈴原が握っているタオルのウサギの表情がなんだか笑ってるように見えて、それもちょっと不思議だ。