きみの頭上には雨雲がついてる。
「明日って本当に晴れるの?」
私は窓から離れて、くるりと鈴原を見た。
目が合って、鈴原はやっぱり耳まで真っ赤で。
私までそれが移りそう。
「うん。晴れるって。雲ひとつない青空らしい」
そうか。明日は晴れるんだ。
私は鈴原の持っていたタオルを手に取って、まだ拭き取れてない鈴原の濡れた髪をガシガシと拭いた。
「ちょ、なんか痛い」
「我慢して」
「はい」
まるで子どもみたいに従う鈴原がなんだか可愛い。その隙間から鈴原がチラッと私を見て、また目が合って、そして私はわざとタオルで鈴原の視界を塞いだ。
「明日……中庭でお昼でも一緒に食べる?」
自分で言ったくせにドクンと、心臓がまた跳ねる。
明日晴れたら部活があるし朝練には行くし。青空だったら中庭でお弁当でも食べたら気持ちいいんじゃないかって。
少し、のんびりと。
きみのことを知れるんじゃないかって思っただけ。
「た、食べる!!」
廊下まで響き渡る声で鈴原が返事をした。
「あはは。声でか」
「うるせーな」
なにかが始まるかもしれない。
なにかが生まれるかもしれない。
そんな梅雨がはじまって5日目の8時23分。
・・・【END】