光~明るいほうへ~
お店に出ると、後ろ姿の制服姿の男性二人。店長と男性バイトだ。
だけど、そのバイト君の後ろ姿に見覚えはない。
そういえば、今日から新しい人が入るって言ってたっけ。
「あぁ、黒崎(クロサキ)さん」
私に気づいて店長がこちらを振り返った。とともに、その人も。
一瞬時が止まったって多分こういうことを言うのかもしれない。
「明夫(アキオ)……」
気づけば、思わず元カレの名前をつぶやいていた。
一方の彼はちっとも驚いた素振りなんか見せず、「よろしく」と言うと気まずそうによそを向いた。
そうだよね。
私なんかと会って気まずいよね。
足元からベタベタとした粘っこいものが貼りつくのを感じる。
ごめんね。
私と知り合いだなんて、いい迷惑だよね。
大丈夫だよ。
私が元カノだったなんて死んでも言わないから。
私なんかが迷惑かけちゃいけないんだ。
「あれ?知り合い?あぁそういえば、二人とも出身が一緒だったね。そうかそうか、じゃあよかった。黒崎さん、彼に色々教えてあげてね」
いかにも人のよさそうな店長はニコニコ顔でそう言うと、バックヤードに引っ込んだ。