光~明るいほうへ~


店内に残された私たちはとりあえずレジの前に並んだ。

客がおらず、重苦しい空気が垂れ込める。
やけに騒がしい音楽が落ち着かなくさせる。

週4日、夕方から夜勤の時間帯にかわるまでが私のシフトだ。

やだな。
こないだ辞めた西田(ニシダ)さんはほぼほぼシフトがかぶってたから、明夫がその後を引き継ぐ人だとしたら、バイトのたびに明夫と会うことになってしまう。

「はぁ……」
「ごめん」

小さくため息をつくとすぐに謝罪の言葉が耳に届く。

え!?
あ、もしかしてため息ついたのきこえちゃった!?

「え、え?」

我ながら挙動不審気味に明夫をチラッと見る。

「いや、新しいバイトが俺で迷惑かなと」

ボソボソと言う明夫。

「え、なんで?私のほうこそ迷惑じゃない?」

あんな後味の悪い別れ方をしたであろう元カノが地元を離れてまさかバイト先にいるなんて思ってもみなかっただろうし。

気づけば本音がポロリ。

「いや、んなワケないし……」

明夫は困ったような顔をしてうつむいた。

そこには嘘なんか微塵も感じない。
明夫は名前のように明るくて、嘘のつけないような男子だった。

そっか。
迷惑じゃないんだ。

きっと私は彼の明るさに陰を差すような、そんな存在だと思う。
それだとしても、迷惑じゃないと言ってもらえるだけで、ほんの少し救われた。

私はこの世に存在していいのだと。
吹き溜まりでひっそりと息をしていなければいけない存在の私が光のそばで存在していいのだと。

きっとそんな風に飛躍して考えていたと知れば、あなたは笑うでしょ。
だけど、私にはそれくらい嬉しいことだったんだ。


その日以来、バイトに行くのが楽しみになった。


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