光~明るいほうへ~
「“清香ちゃん”?」
明夫は怪訝そうにしてる。
それはそうだ、私の本名じゃないのだから。
「彼氏?」
ニヤニヤニヤニヤ。
男は不気味にすら感じる笑顔のまま、ゆっくりと近づいてくる。
明夫は私の前に立って遮ってくれた。
明夫。
君にそんな風に守ってもらえるようなそんな存在じゃないのに……。
嬉しさと申し訳なさとで胸が張り裂けそうだった。
「最近全然返信くれないと思ったら、彼氏出来たんだ」
明夫の肩越しに見えるその人の目が笑っていない。
こわいこわいこわい。
必死で自分の震える体を抱きしめる。
なにが出てくるの?
「あんたなんなんだよ、待ち伏せして。ストーカーかよ」
明夫は食って掛かる。
やめてやめて。
私のためにそんな闘わないで!
私なんてあなたにかばってもらえるような存在なんかじゃないのに。
あなたが黒に染まってしまう。
「俺?清香ちゃんと裸の付き合い」
勝ち誇ったような顔がチラリと見えた。
嗚呼終わりだ。
私はやっぱり光の差すほうへ向かってはいけない存在だったんだ。
明るい場所で生きてはいけない、それを望んではいけなかったんだ。
仄暗い場所で息をひそめ、自己を傷つけることで生きていられるようなそんな存在だったんだ。
だけど、自分を殺すのももう限界。疲れ果てた。
もうこの身も滅ぼしてしまおう。