ここにはいられない
ガスは使えても給湯は電気なので結局お風呂は無理だった。
食事が終わると水と沸かしたお湯とでなんとか洗い物を済ませ、早々に寝ることにする。
南部さんと長田さんはリビングに布団を並べて、和泉さんと私は寝室を借りて一緒に私の布団で寝た。
狭いし洋服のままだと寝心地はよくないけれど、人の体温と気配がもたらす安心感は絶大。
千隼に抱き締められた時もそうだった。
暗闇は変わらないのに、全然怖くなかった。
むしろ、それよりも今まで感じたことのない何か大きな感情の波の方がずっとずっと怖かった。
もし、あの波に身を任せていたら、どうなっていたのだろう?
目をつぶってする考え事がどこか夢がかってぼんやりしてしまうように、暗い中で起きた一連の出来事は現実だったという実感が伴わない。
『こんな夜は好きな人の側にいたいじゃないですか』
和泉さんがああ言った時、私は誰を思い浮かべたんだろう?
そのぼんやりした幻を追い掛けているうちに、いつの間にか眠りに落ちていた。