ここにはいられない
8 雷と避難指示
『今夜飲みに行かない?』
大ちゃんから来た何の変哲もないメッセージに不吉なものを感じ取ったのは、ただの邪推だろうか。
停電の夜から10日ほど経った木曜日。
私はデスクでお弁当の唐揚げを噛みながら深い溜息をついた。
なんだか行きたくない。
大ちゃんからの誘いにそんな気持ちになるのは初めてだった。
『他に誰が来るの?』
里奈が来るかどうかで臨むスタンスは全然違う。
二人の仲があの後どうなっているのかも聞いていなかった。
『菜乃と千隼だけ』
帰ってきたメッセージの文字にビクッと心臓が跳ねた。
あれから何度も千隼とはすれ違ったけれど、結局は挨拶だけ。
どちらかがもう一歩踏み込まない限り、話す機会なんてない。
千隼にどう向き合ったらいいのか、答えは相変わらず出ていないけど、会って確かめたいという気持ちはあった。
もし、今日の飲み会が終わったら話し合う時間を作れるかもしれない。
『わかった。行く』