ここにはいられない
看護師になろうと思った時一番ネックだったのは夜勤だった。
夜中に働くことに対してではなく、夜暗い中病院で働く、ということに。
夜勤のない個人病院を選ぶこともできたけれど、最初は経験を積むことが大事だと思ったし、何よりお給料が全然違うので結局総合病院に勤務した。
やってみると意外と平気だった。
一人で勤務するわけじゃないし、ナースステーションは明るいし、患者さんはたくさんいるから寂しくない。
市役所の保健師なら夜勤そのものがないと思っていたのに、残業のことまで考えていなかった。
大抵の職員は定時でなんか帰れず残業するのだけど、ある一定時間を過ぎるとほとんどが帰ってしまう。
10時を過ぎると広いフロア内でもポツリポツリ、といった程度。
最後まで残ってしまうとガランとしたところにたった一人になってしまうのだ。
節電が騒がれる中、全部の電気をつけるわけにもいかず、自分の周りだけがボウッと明るい。
それはまるで闇が迫ってきているようでどうしても怖かった。
だからと言って仕事を放り出すわけにはいかない。
怖いと思うことを悪いとは思わないけど、それを仕事に影響させてはいけない。
家に持ち帰ることができるものは持ち帰るとして、とにかく早く終わらせようと必死にキーボードを叩いた。
コピーは自宅ではできないので、高機能な複合機を「早く!早く!」と小声で急かしながら。