ここにはいられない
4 チョコレートと催眠術
◇ ◇ ◇
大ちゃんと里奈の結婚で受けたショックも、緊迫したトイレ事情により霞んでしまった。
何度目かのトイレから出ると千隼がマグカップに並々と暖かいお茶を注ぎ足してくれていた。
「ありがとう」
ぬるくなっていたマグカップから、またホカホカと湯気が立ち上っている。
まだまだ残暑で冷たいものを飲みがちだけど、体調が悪い時は身体を温める方がいいみたい。
膀胱炎に効果があるかどうかはともかく、千隼が淹れてくれたほうじ茶は内蔵の隅々までじわーっと広がっていくような気がする。
私がそう思うのだから、きっと身体が喜んでいるのだ。
ズキズキした気持ちさえほぐれていく。
「トイレが不自由って、思った以上に辛いものなんだな」
黙ってテレビを見ていると思っていた千隼がしみじみと言った。
「なんか実感がこもってるね」
「選挙の開票作業中、かなり我慢した」
開票作業は一応密室でやるのだけど、作業中簡単に出入りできないらしい。
だから念のため水分も控えて準備していたのに途中で行きたくなったのだそうだ。
話を聞いただけで軟弱な私の膀胱はトイレを要求してくる。
けれどこの信号は錯覚だ。
ほら、黙って堪えたら収まった。
大ちゃんと里奈の結婚で受けたショックも、緊迫したトイレ事情により霞んでしまった。
何度目かのトイレから出ると千隼がマグカップに並々と暖かいお茶を注ぎ足してくれていた。
「ありがとう」
ぬるくなっていたマグカップから、またホカホカと湯気が立ち上っている。
まだまだ残暑で冷たいものを飲みがちだけど、体調が悪い時は身体を温める方がいいみたい。
膀胱炎に効果があるかどうかはともかく、千隼が淹れてくれたほうじ茶は内蔵の隅々までじわーっと広がっていくような気がする。
私がそう思うのだから、きっと身体が喜んでいるのだ。
ズキズキした気持ちさえほぐれていく。
「トイレが不自由って、思った以上に辛いものなんだな」
黙ってテレビを見ていると思っていた千隼がしみじみと言った。
「なんか実感がこもってるね」
「選挙の開票作業中、かなり我慢した」
開票作業は一応密室でやるのだけど、作業中簡単に出入りできないらしい。
だから念のため水分も控えて準備していたのに途中で行きたくなったのだそうだ。
話を聞いただけで軟弱な私の膀胱はトイレを要求してくる。
けれどこの信号は錯覚だ。
ほら、黙って堪えたら収まった。