ここにはいられない
「今日も車?」
「うん」
そういうのに、千隼はやっぱり駐輪場まで付いてきてくれた。
私が怖がりだって知ってるから。
だけどそれを指摘するのはなんとなく恥ずかしくて、お礼も言えなかった。
「じゃあ」
「うん」
私が自転車に乗るまで見届けて、駐車場に歩いて行く。
こうして庁舎の前で別れても、ちょっと言い足りないことがあっても、「あとで言えばいいか」って思えていた頃とは違う。
会おうと思えば職場でも家でも会えたから、連絡先も交換しないままだった。
次に会うことはあるんだろうか、もしかしたらもう話すこともないかもしれない、そんな焦りがじわじわと広がって、自転車を漕ぐ脚に余計な力が加わった。