ここにはいられない
7 地震とオムライス



〈霜月〉というだけあって、11月になるとストーブなしではいられない。
朝晩は息が白くなるほど冷え込んで、道路がしっとりと色を濃くしている。

とはいえ、昼間はまずまず気温が上がるから厚着をしていればエアコンもストーブも使わなくていい。
この季節はまだ道路が凍るなんてこともない。

それなのに今日はやたらと滑る。

土曜日なのでスーパーに行って食材をまとめ買いをした帰りで、ガソリンの給油ランプが点滅したからガソリンスタンドに向かって車を走らせていた。

今日は使い過ぎたからガソリン代間に合うかなー?
あ、灯油も一緒に買いたかったのに、タンク積んでくるの忘れちゃった!

なんて考え事をしていたから気付くのが遅れたのだと思う。
ハンドルは真っ直ぐ握っているのに、思うような方向に進まずフラフラする。
うまくコントロールが効かない。
だから道路が凍って滑っているのだと思っていた。

そのまま少し進むと、道路の真ん中で車がハザードランプを点けて停まっている。
不思議に思って少し手前で停まって様子を見ていると、電柱と電線がぐわんぐわんと揺れていた。

「え?あ!地震?」

動いていたから気付けなかったみたいだ。
外だとわかりにくいけど、かなり大きく長そう。

電柱が倒れてくるんじゃないかと心配になって、そこを離れてすぐ隣のコンビニの駐車場に入った途端、コンビニが真っ暗になった。
停電だと気付くのには、また少し時間がかかった。
日暮れが早くなったとは言えまだ午後4時。
こちらは電気を必要としていなかったから実感がなかったのだ。

揺れが収まったのか、まだ揺れているのかわからないまま、ガソリンスタンドは諦めてとにかく家に帰ろうと車を進めて行くと、交差点は混乱していた。
停電で信号機が全部消えている。
真っ直ぐ進みたい車も、曲がりたい車も4方向から滅茶苦茶に入り乱れて、タイミングを伺いながら車体をねじ込んでいくイメージ。

裏道を通ればよかったと後悔しても、巻き込まれていたのでもう遅い。
なんとかそこを抜け、あとは信号のない道を選んで帰った。



< 98 / 147 >

この作品をシェア

pagetop