今年の夏もキミを想う…。

珍しく素直に褒めたら、高知が調子に乗ってニマニマ笑い出したので、宮崎はそれ以上口を噤んで目の前の景色に意識を集中させる。

「あっ!せっかくなんだから、もうちょっと褒めてよー」と高知の声が聞こえたが、それも無視して、宮崎は目の前に広がる景色を眺める。

もし今、彼女が同じ景色を眺めていたなら、何と言うだろうかと考えた。

明かりが少ないことを悲しむだろうか、それとも、温かい光が灯る村を、嬉しそうに眺めるのだろうか……。

ぼんやりとそんな事を考えていたら、ちょんちょんと遠慮がちに袖を引かれた。

思考を中断して隣を見れば、目があいそうになって慌ててそらす和果子がいた。


「……次の夏もさ、一緒に……見れたらいいね」

「そうだな……」


和果子の更に向こうには高知がいて、その隣に並んだ柚花が何やら話しかけるたびに、二人は和やかに笑い合っている。

この場に彼女がいないことが、宮崎には、何だか無性に寂しかった。


「今度は……あいつも一緒に、見れたらいいな」


何気なく放ったその言葉に、和果子が悲しげに目を伏せた事など、景色に視線を移した宮崎は、気づくこともなかった。





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