今年の夏もキミを想う…。


「誰もいないからって、はしゃぎすぎ。大きな声で、スクール水着だの、犯罪だの、グレーゾーンだのって……」


呆れたように深々と息をつく和果子の脇から、柚花も恥ずかしそうに頬を染めてひょっこりと顔を覗かせる。

柚花の姿を目に止めて、即座に高知の優しくてスマートなお兄さんモードが発動した。


「いやあ、海はついつい開放的になっていけないね。気を付けないとね。ね?宮崎クン」


高知にガッチリと肩を組んで迫られ、更に和果子にジト目で睨まれて、宮崎はため息を飲み込んで仕方なく頷いた。

本当は、自分は高知に巻き込まれただけのただの被害者なのだと訴えたかったが、そういう雰囲気でもない。


「とりあえず……あっついので離れてください、先輩」


青い空、白い雲、貸し切り状態の砂浜に、すぐ目の前に広がるキラキラと陽光を反射する海。

ここに彼女がいないことを残念に思う気持ちをこらえて、宮崎が足元に視線を落とすと、カニが一匹、ひょこひょこと目の前を横切って行った。





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