今年の夏もキミを想う…。


「あ、あの……じゃあ荷物、お願いします」

「うん、任せて」


ワンピースタイプの、胸元と腰周りにささやかなリボンとフリルがついた何とも可愛らしい水着姿で、柚花が海に駆けていく。


「ゆずちゃんも浮き輪使う?あっ、昔よくしたみたいに、オレが引っ張ってあげようか」

「あっ、はい。お願いします……」


波打ち際で浮き輪を膨らませていた高知は、やって来た柚花に笑顔を見せる。

水着姿の女の子がすぐ目の前にいるというのに、いつものように慣れた様子で褒めちぎる事もなく、いいお兄さんモードを発動中の高知に、柚花がほんの少し残念そうに眉を下げる。

それでも胸元のリボンを指先でいじってみたり、腰周りのフリルを何度も直してみたりしているが、高知は浮き輪を膨らませることに必死で全くそちらを見ていない。

その様子をぼんやりと眺めていた宮崎の隣に、和果子が黙って腰を下ろした。
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