今年の夏もキミを想う…。
「和果子は行かないのか?」
「そういうそっちはどうなの。まさかとは思うけど、泳げない?」
「泳げるわ。でも何か……朝も早い時間に突然叩き起されて、荷物と一緒に車に詰め込まれたかと思ったらバスに乗せられて、気がついたら海って……」
「先輩のアポなし訪問はいつものことでしょ」
そう言ってクーラーボックスを開けた和果子は、そこにででんと存在を主張するスイカの姿に、無言で蓋を閉めて、その隣にあるもうひとつのボックスに手を伸ばす。
「なんでクーラーボックス二個も持ってきてるのかと思ったら、一個はスイカ用だったわけね」
「和果子が、夏と言えばスイカって言ったから。高知先輩、海でスイカ割りするために張り切って準備したらしい」
スイカが入っているのとは別のクーラーボックスから取り出したサイダーを、和果子は隣に座る宮崎の頬に押し付ける。
「つめった!」
ビックリしてこちらを向いた宮崎に、和果子はそのままサイダーのペットボトルを押し付け、自分も新しいのを一本取り出すと、キャップを開けて口をつけた。