今年の夏もキミを想う…。
「何ですか?」
同じような声量で問い返せば、ようやくその視線が和果子を捉える。
けれど、動き出しそうに震えた唇は、そっと静かに閉じられ、音を発する事もなくギュッと引き結ばれる。
何かを言いたくて、でもそれを堪えているような。
もしくは、言いたいのに、同時に口にするのを恐れているような、そんな気配が感じられた。
「先輩……?」
中々口を開かない高知に、和果子は不思議そうに首を傾げる。
再び和果子が口を開こうとした時、バスがカーブに差し掛かり、隣からごんっと鈍い音が聞こえた。
和果子が驚いて視線を向けてみると、窓ガラスに頭をぶつけたらしい宮崎が、それでもガラスに頭をつけたまま眠りこけている。
その様子に、思わずクスリと笑みがこぼれた。
宮崎を見つめる和果子の視線に、口元に浮かぶ楽しげなその微笑みに、高知は出かかった言葉を飲み込んでそっと視線をそらす。