今年の夏もキミを想う…。
――「だから嫌いなんだよ、雨は。特に夏の雨」
「そう?暑さで乾いた地面が、たっぷりの水を吸い込んでいく感じが、私は好きだけど」
そう言って笑った彼女は、ひまわり模様の傘をさしていた。
目の前で楽しそうにくるくると傘が回り、ひまわりも一緒に回る。
遠心力で飛ばされた水滴が、降り注ぐ雨粒に混じって地面にポトポトと落ちていく。
「それに、雨が降ったら傘をさせるでしょ?この傘、凄くお気に入りなの」
振り返った彼女が、また笑う。
傘をくるくると回して、嬉しそうに笑う。
回るたびに飛んでいく水滴が、彼女をキラキラと輝かせているように見えて、宮崎は後ろを歩きながらぼんやりとその楽しげな姿を見つめていた。
「この傘はね、ひまわりだから、夏しかさせないの。夏だけ限定なのよ」
嬉しそうに自前の傘について語りだす彼女に、どこにでもあるような何の変哲もないビニール傘をさしていた宮崎は、気のない相槌を返す。
ぼんやりと彼女を見つめながら歩いていたせいで、お留守になった足が見事に水溜りにはまり込み、擦り切れたスニーカーから水が染み込んでくる。
とにかくベタベタムシムシしていて、湿気で服が肌に張り付くのも気持ち悪く、やはり夏の雨は嫌いだと、宮崎は心の中で強く思った。