今年の夏もキミを想う…。


「おおー冷やし中華!いや、冷やし中華風そうめん、中々うまいな」


ツルツルっと音を立ててそうめんを吸い込んで、宮崎が頬を緩める。

ちぎったレタスに、細切りのハムときゅうり、薄焼き玉子にプチトマトなど、具材は完全に冷やし中華だが、使っている麺がそうめんで、かかっているつゆが和果子特性のドレッシングという点に置いて、それは完全な冷やし中華ではなかった。

それでも出来は上々で、目の前で宮崎が美味しそうに食べている姿を見て、和果子も自然と頬が緩む。

実は、初めから手料理をご馳走するのが目的で、時間を見計らって来たなどとは死んでも口にできないので、和果子もツルリとそうめんをすする。

柚花のひたむきな頑張りを近くで見たいたせいか、和果子の中でも少しずつ、頑張ってみようかなという気持ちが芽生え始めていた。

彼女のいない今だからこそ、宮崎の中で少しでも、自分という存在を大きくするきっかけが欲しい。

友達としてではなく異性として、自分を見て欲しい、意識して欲しい。

和果子がチラリと伺えば、宮崎は美味しそうにそうめんをすすっている。

女の子とふたりっきりで同じ空間にいて、手料理まで食べているというのに、ちっともドキドキした様子がないのが少しだけ悔しかった。

悔しいが……
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