今年の夏もキミを想う…。


「海に行った日の弁当もそうだったけど、和果子って料理うまいよな。昔は不器用で、調理自習の時には、いっつも包丁で指切ってたくせに」


そう言って笑う宮崎がすぐそこにいるだけで、嬉しくて、幸せで、苦しくて、切ない。


「あたしは、やればできる系なの。それに、小学生の時の話をしてるなら、宮崎だってしょっちゅう鍋焦がしてたからね」


本当は、あなたの為に料理を勉強した。

いつかあなたに食べてもらいたくて、“美味しい”って言ってもらいたくて、必死になって練習した。


「あれは俺のせいじゃない。もともと、鍋が焦げやすかったんだ」

「なによそれ」


言えない気持ちを胸にしまって、思い出話に笑い合う。


「あっ……」


何気なく、和果子が視線を送った窓の向こう。


「止んだみたいだな」


いつの間にか雨は止んでいて、同じ方を見て、宮崎がポツリと口にする。
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