今年の夏もキミを想う…。


「初めにやるトランプと言えば、やっぱりババ抜きでしょ」


“……誰が決めたんですか”と言ってやりたい気持ちを、宮崎はグッと堪える。

そんなことを聞いてしまった日には、“オレ!”と返ってくることは目に見えているので、黙って自分の前に配られたトランプを取り上げ、ババ抜きの準備を淡々とこなしていく。

同じ絵柄のトランプが次々とテーブルに出されて、一通り全員の準備が終わったところで、ざっと周りを見渡した宮崎は、一瞬で確信した。

おそらくババは、高知が持っていると。

昔からそうだった。

ババ抜きは最後までババを持っていた人が負けなのに、なぜか高知はババが手元に来るたびに嬉しそうにしていた。

だからきっと今回も、一人だけ妙に嬉しそうな顔をしている高知が、ババを持っているに違いない。


「よしっ!じゃあじゃんけんで勝った人から時計回りね」


かくして、じゃんけんの結果。


「はい、宮崎クン。どれでも好きなのどーぞ」


ババを持っているはずの高知から、宮崎が一枚引くところから、ゲームはスタートした。





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