今年の夏もキミを想う…。


「宮崎はあれだね、先輩に気を使うって事を知らないんだね」

「負け惜しみはやめてください。大体、そんな接待トランプして何が楽しいんですか」


最終的には、宮崎の予想通りババを持っていた高知が、最後までそれを誰にも渡すことなく敗北し、次の神経衰弱では柚花が異様な強さを発揮して圧勝。

その次の大富豪では和果子が勝利し、七並べでは宮崎が勝つという結果に終わった。

おかげで先程から、宮崎は高知のブツクサと垂れ流される文句の標的にされていた。


「さてと……」


一番負けの多かった高知が、罰ゲームとして片付けていたトランプを箱にしまってトンっとテーブルに置くと、目の前に座っていた柚花に向かって柔らかく微笑んで見せる。


「そろそろ帰ろうか、ゆずちゃん」


雨が降っているおかげで、今日はいつもより日が短い。

時間的にはまだ夕方頃だが、外は常になく薄暗かった。

残っていた麦茶を飲み干して立ち上がった高知に、柚花も続いて腰を浮かせる。


「雨の日にみんなでやるトランプってのも、結構楽しいね。次こそはオレが全勝して、宮崎クンをうーんと泣かせてやるから、覚悟して待ってろ!」


楽しそうにそう言い残して、高知が柚花を伴って玄関に向かう。
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