今年の夏もキミを想う…。

緑の山々が連なるイラストが描かれた便箋をポケットに、宮崎は財布から取り出した小銭を、目の前の自動販売機に投入していく。

”じゃあ、また来年の夏に”という簡潔なメールだけを残して、高知が村を出立したのはつい昨日の事。

誰よりも長く村に居座るかと思われた高知の、思いがけない早い戻りに、宮崎は少なからず驚いていた。

なんでも、夏休み前までが期限の課題を一つ提出し忘れ、危うく単位を落としそうになっていたらしく。

同じような状態の生徒が他にも複数名いたことで、救済処置として特別講義が行われる事になり、それに出席するべく高知は急いで大学へ戻って行ったと、あとから柚花に聞かされた。

なるほど、どうしてもひまわりを見に行きたがっていたわけが何となくわかって、宮崎の中に、ほんの少しだけ申し訳ない気持ちがこみ上げる。

自動販売機で缶のオレンジジュース三本買い、それを僅かに凹んだ自転車のカゴに入れてペダルに足を乗せる。
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