今年の夏もキミを想う…。
――「宮崎くん」
不意に呼びかけられて、宮崎は足を止める。
振り返れば、僅かに後方で立ち止まった彼女が、一軒の家に視線を注いでいた。
「亡くなったんだって、ここのおばあちゃん……」
宮崎もまた、彼女と同じ家に視線を向ける。
ついこの間まで、その家にはおばあさんがひとりで住んでいた。
旦那さんを早くに亡くして、一人息子は町に出たまま帰ってこず、たったひとりで、その家に住んでいたおばあさん。
その人が先日、ついに亡くなった。
家主のいなくなってしまった家は、そんなことなどまるで知らないような顔で、今もまだ、誰かが帰ってくるのを待っているようだった。
もう誰も帰ってくることはなく、これからはゆるゆると崩壊に向かっていくだけの家を、彼女は悲しそうな顔で見つめている。
「寂しいね、どんどん人がいなくなって行って。家も……まだこんなに立派で、ちゃんとしているのに。これからは、誰も知らないところで、ひっそりと崩れていくしかないなんて」
「寂しいね」ともう一度繰り返して、彼女はそれっきり黙ってその家を見つめ続けた。